私が今、【さらに】免疫に本気で向き合う理由 (がんワクチン療法)

先日ご報告した通り、脊椎の手術が無事に終わり、身体は順調に回復しています。

外科的な処置(悪いところを取る)は終わりました。ここから先は再発を防ぎ、より強く健康な身体を作っていくための「自己管理」が主戦場になります。

現状を整理すると、

・(転移性の)悪性脊椎腫瘍の除去完了
・転移元が見つからない=原発不明がん

→ 今、体内には「見つけられないくらい小さい癌がある」または「癌が自然消滅した」のどちらかの状況

現時点では放射線や薬物療法の予定は無く、頼れるものは自らの免疫システムのみという状況です。
そんなわけで、「免疫がフルパワーを発揮できるようにしていこう!」というのが前回までの話なのですが、実はもう一つまだお話していない「免疫にがんばってもらいたい理由」があります。

そもそも「ワクチン」とは何か?

ちょっと話が変わるのですが、「免疫を高める」という話の前に、ワクチンの仕組みについて整理しておきましょう。

インフルエンザやコロナでおなじみのワクチン。これの本質は直接的に敵を殺すことではありません。体内の免疫システムに「敵の顔写真(特徴・情報)」を覚えさせることです。

弱らせたり死滅させたりしたウイルス(またはその一部)を体内に入れることで、免疫細胞に「こいつが敵だ!」と認識させます。すると、いざ本物の敵が入ってきた時に、即座に攻撃できるようになる。 つまり、免疫という軍隊に、事前に「手配書」を配っておくこと。これがワクチンの正体です。

がん治療におけるワクチンの壁

私は最近まで知らなかったのですが、実はがん治療にも「がんワクチン療法」というアプローチが存在します。手術、抗がん剤、放射線に続く「第4の治療」とも呼ばれる治療方法の一つで、患者自身の「がん細胞」などを使って免疫細胞を活性化させる治療法です。つまり自分のがん細胞の情報をワクチンの形で免疫システムに伝えるわけですね。「こいつを見つけて破壊しなさい」と。

しかしこの治療法は一般的ではないようです。まだ研究段階のものも多く、自分の細胞を使ってオーダーメイドでワクチンを作るような高度な治療を受けようとすれば、自由診療となり数百万円単位の費用がかかることも珍しくない「効果は期待したいけれど、とてもハードルが高い」というのが、がんワクチン治療の実状です。

手術のついでに、それがインストールされた

なぜこんな話をしたかというと、今回私が受けた脊椎の手術に「がんワクチン」と同様のものがオマケみたいについてきたからです。
「そんなバカな」と思うでしょ?

きっかけは担当医師との会話でした。手術後の写真を見ながら、どんな手順を行ったか話してくれました。

「骨と骨の間にはね、摘出した癌の骨を液体窒素に浸けてがん細胞を殺したものを詰めてあるんですよ」と。

聞いた瞬間の私の気持ちは「せっかく取った癌の骨を戻した!?大丈夫なんかい!」でした。ほとんどの素人ならこう思うでしょう。

その場で先生は細かい話はせず「大丈夫ですよ」とおっしゃいました。
つなげたい骨と骨の間には「つなぎ」が必要みたいで、通常はお尻かどこかの骨をちょびっと削って使うらしいのですが、癌を殺した後の骨を使えばよその骨を切らなくて済む、とのこと。
「うまいことリサイクルしたんだな」とその場では思っていました。

その夜、気になって調べてみると・・
これは「液体窒素処理自家骨移植」という技術でした。切除した骨を液体窒素(-196℃)で凍結処理し、がん細胞を死滅させた上で、再び体内に戻して再建するというものです。
ここまではお医者さんに聞いた通りなのですが、同時に「凍結免疫」という技術も使われていたことを知りました。

実はこのプロセスを経ることで、処理された骨から「敵(がん細胞)の情報」が放出されます。すると、体内の免疫システムがそれを認識し、「これと同じ顔をした敵を攻撃せよ」という司令が出た状態になります。

つまり、手術をしたと同時に、実質的に「自分専用のオーダーメイドワクチン」を打ったのと同じような状態になったのです。

大量のがん細胞の死体というのは、ワクチンと比較しても、量・質ともに桁違いの情報量で、免疫システムの教材として最高のものみたいです。

いやいや、うまいことリサイクルどころの話じゃないじゃん・・

後から先生に聞いたら「あんまり患者さんには言わないんですが、そういう効果もあったらいいなと思ってます」と控えめにおっしゃっていました。
過度に期待させないようにという配慮なのでしょうが、オマケでもらったお守りとしてはあり得ないくらいありがたいものです。

例えばすでに他にも大きな腫瘍がある状態をどうにかできる可能性は少ないかもしれませんが、私の「見つけられないくらい小さい」「どこに隠れているかわからない」タイプの敵に対しては最高の武器と言えるでしょう。

そしてどうやらこの手法、骨だからこそ可能で、他のがん細胞で同じことをするのは難しいみたいです。骨は凍らせても骨の構造を保てるけど、肉はグチャグチャになってしまうので。

10万人に一人というレアな病気にくっついてきたレアな切り札。
不幸中の幸いの極みです。

こうして、数百万円かけても難しいようなシステムが、手術の「副産物」として私の背中にインストールされたのです。

世界最先端が、ここ石川県にあった

この夢のような技術、実はここ石川県の金沢大学附属病院整形外科が世界で初めて開発した「お家芸」でした。

脊椎腫瘍の治療において、世界的な術式を生み出し、現在もこの分野の最前線を走るチームが、まさかの自宅から車で20分の場所にいたのです。 世界中の医師が注目する最先端の治療法が、たまたますぐそばにあり、私の病状(骨への転移)に完璧にマッチしていたこと。この巡り合わせには感謝しかありません。

この技術のおかげで、私の免疫システムは、これまで把握できていなかった敵(私の身体のがん細胞)の情報をガッツリ学習したはずです。
準備万端!さあ狩りにいっておいで!!

免疫がさらに重要になった

冒頭にも書いた通り手術前後は「がんはあっても小さいんだし、薬や放射線の予定も無いのだから、少しでも自分の免疫にがんばってもらおう」という認識でした。

しかし、新しい事実として「私の免疫システムに戦うべき敵の情報ががっつりインストールされている」ということを知りました。これはおまじないではなく、科学的にきちんと効果が確認されている技術です。

この状況は本当に様々なめぐり合わせがないと生まれなかったと思います。
「免疫でどこまでやれるか、やってみろ!」と言われているような気さえします。

これが「私が今、さらに「免疫」に本気で向き合う理由」です!

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