こんにちは。糀シロップコージローの酒師です。
糀シロップ コージローの製品を手にとってくださったお客様から、「米糀はどこのものを使っているの?」とご質問をいただくことがあります。
そのたびに、私はこうお答えしています。「すべて、私自身の手で一から育てています」。

糀シロップ コージローの味わいの根幹を支える米糀は、市販のものやどこかから仕入れたものではなく、すべて自家製です。なぜ、私がそこまで時間も手間もかかる自家製にこだわるのか。それは、糀シロップ コージローが最も大切にする「クセのない、すっきりとした自然な甘み」を実現するためには、譲れない部分だからです。
今回は、私の個人的な探求から生まれた、このシロップの心臓部とも言える、米糀づくりのこだわりについてお話しさせてください。
味と健康効果の鍵を握る、繊細な「酵素バランス」
糀は、蒸したお米に麹菌(こうじきん)という微生物を繁殖させて作られます。この過程で、麹菌は様々な「酵素」を生み出します。この酵素こそが、お米のデンプンを分解してブドウ糖のやさしい甘みを生み出したり、タンパク質を分解して旨味を引き出したりする、糀の力の源です。
実はこの酵素、糀の育て方、つまり温度や湿度の管理ひとつで、生まれる種類や量のバランスが変わる、とても繊細なものなのです。
私が目指したのは、糀独特の香りを抑え、すっきり飲みやすい味わい。そのためには、甘みを生み出す糖化酵素(アミラーゼ)を大量に含む米糀が必要でした。
この理想の「酵素バランス」を持った米糀は、なかなか市販のものでは見つけることができません。だからこそ私は、自らの手で米糀を育てることにこだわっているのです。

探求心から生まれた、自家製培養装置
実は、糀シロップ コージローという事業が生まれるずっと前、私は個人的な興味から糀づくりに没頭していました。伝統的な糀づくりを学ぶ機会があり、その奥深さに魅了されていた頃、ある論文との出会いが大きな転機となります。
その論文には「温度のコントロールによって、糀が生み出す酵素のバランスが変化する」という意味のことが書かれており「これを自分の手で試してみたい」と強く思うようになったのです。
しかし、それを実践するには伝統的な手法では難しい精密な温度管理が必要でしたが、これを実現できる装置は市販されていませんでした。
「なければ、自分で作ってみよう」。
そう思い立ち、石川県かほく市でIT技術を活用したモノづくりを支援されている教室K-Labさんに相談しました。
実は私の息子がお世話になっている教室で、先生とは顔なじみだったのです。
ichigojamという教育用のマイコンを応用し、先生のサポートをいただきながら、一台の機械を組み上げたのです。これが、現在の糀培養装置の原型です。


そして、その自作の装置で試行錯誤を重ねていった結果、思いがけず雑味のないクリアな味わいの米糀ができてきました。特に「クセのないもの」を目標にしていたわけではなかったため、この偶然の発見には私自身が驚きました。
このクリアな味わいの糀なら、従来の甘酒が苦手だった方にも、糀の本当の美味しさや素晴らしさを届けられるかもしれない。この発見が、糀シロップ コージローを事業化する大きなきっかけとなりました。
品質と安全性を最優先に。
米糀の元となる麹菌そのものは、「種麹(たねこうじ)」と呼ばれます。この種麹は、専門の種麹メーカーから仕入れたものを使用しています。


お客様に安全な製品をお届けするために、私は自家採種や自然界からの野生の菌を培養することは行いません。専門家によって徹底した品質管理のもとで作られた、安全で優れた麹菌だけを厳選して使用しています。
自家採種や野生の菌で安全な製品を作れるなら面白そうなのですが、残念ながら私にはその技術はありません。
糀シロップコージローに込めたこだわり
糀シロップ コージローの、すっきりとして飲みやすい味わい。それは、今回お話ししたような、目には見えない部分での一つひとつのこだわりと、地道な工夫の積み重ねから生まれています。
糀が苦手だった方やお子様にも、心から「おいしい」と感じていただけるように。そして、糀の素晴らしい力を、日々の生活に気軽に取り入れていただけるように。
これからも、この小さな工房で、米糀づくりに情熱を注ぎ続けてまいります。
