こんにちは。糀シロップ コージローの酒師です。
健康のために糖質を意識することが当たり前になった現代。しかし、その糖質に様々な種類があり、体への影響が全く異なることまでご存知の方は、まだ少ないかもしれません。
今回は、我が子がスポーツの前後によく飲んでいる飲み物によく使われている、ある甘味料についてのお話です。
これは、お子様を持つすべての親御様に、ぜひ知っていただきたい大切な情報です。
「果糖」「ぶどう糖」その名前に、安心していませんか?

部活動を終えた息子が、仲間と笑いながらスポーツドリンクを飲む。夏の暑い日の熱症対策として、また風邪で熱があるときなどにもスポーツドリンクはありがたい存在です。水分補給の大切さは、もちろん理解しています。
しかし、そのペットボトルの裏面、原材料表示に目をやったとき、甘味料の最初に記載された「果糖ぶどう糖液糖」という文字に、ふと手が止まりました。
正直に告白しますと、発酵と糖について学ぶ以前の私は、この言葉に何の疑問も抱きませんでした。「果糖」や「ぶどう糖」という響きから、果物や自然の恵みに由来する、体にやさしい糖分だと無意識に思い込んでいたのです。おそらく、同じように感じられる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、その実態は、私の抱いていたイメージとは異なるものでした。
清涼飲料水から調味料まで。私たちの生活に潜む「異性化糖」の正体
この「果糖ぶどう糖液糖」とは、一体何からできているのでしょうか。
これは主に、トウモロコシなどのでんぷんを、酵素の力で分解して作られた液状の糖で、「異性化糖」とも呼ばれます。

スーパーマーケットに足を運べば、ジュースやスポーツドリンクはもちろん、お菓子、パン、ドレッシング、焼肉のタレに至るまで、驚くほど多くの加工食品に使用されていることに気づきます。液体で扱いやすく、冷たいものにも溶けやすい上に甘みも強いため、食品メーカーにとって非常に用途の広い甘味料なのです。
その名の通り、主成分は「ぶどう糖」と「果糖」ですが、実は日本農林規格(JAS)によって、この二つの成分の割合で明確に名称が区別されています。
- ぶどう糖果糖液糖: 果糖の割合が50%未満のもの
- 果糖ぶどう糖液糖: 果糖の割合が50%以上90%未満のもの
強い甘さが求められる清涼飲料水などには、果糖の割合が多い「果糖ぶどう糖液糖」が使われる傾向があります。そして、問題となるのが、この「果糖」が体内で処理される際の、特殊なルートなのです。
肝臓に負担をかける「果糖」の特別な代謝ルート
ここで少し、「代謝」という言葉について触れさせてください。簡単に言えば「体に取り込んだものを、体が使える形に変換する作業」のことです。食事で摂った栄養素を、活動するためのエネルギーや、体を作るための材料に変える、私たちの体の中で常に行われている大切な化学反応を指します。
私たちの体にとって、糖は重要なエネルギー源です。しかし、その種類によって、この「変換作業」、つまり代謝の仕組みが大きく異なるのです。
「ぶどう糖」は、血液を通じて全身の細胞、特に脳や筋肉へ運ばれ、すぐに利用できる主要なエネルギー源となります。まさに、体の活動を支えるガソリンのような存在です。
一方で「果糖」は、そのほとんどが肝臓でしか代謝されない、という極めて重要な特徴を持っています。つまり、摂取した果糖の処理は、すべて肝臓という一つの臓器が、一手に引き受けなければならないのです。
もし、液体で大量の果糖が一気に体に流れ込んできたら、肝臓では何が起こるのでしょうか。

1. 処理しきれない糖が脂肪に変わる「脂肪肝」のリスク
大量の果糖が運び込まれた肝臓は、それをエネルギーに変えようと懸命に働きます。しかし、一度に処理できる量には限界があります。そして、エネルギーとして使いきれなかった果糖は、非常に効率よく中性脂肪へと変換され、肝臓そのものに蓄積されていってしまうのです。
これが、お酒を飲まない人や子供にも起こりうる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」です。近年の食生活の変化を背景に患者数は増加しており、特に若い世代での発症も問題視されています。良かれと思って飲ませているスポーツドリンクが、知らず知らずのうちに、お子様の大切な肝臓に大きな負担をかけ、脂肪肝のリスクを高めている可能性があるのです。
2. 満足感を得にくく、さらなる糖分を欲してしまう悪循環
果糖は、血糖値を直接的には上げにくいという性質があります。一見すると、健康的に思えるかもしれません。しかし、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。
血糖値が上がらないということは、満腹感を感じさせるホルモン(インスリンなど)の分泌が刺激されにくい、ということです。つまり、甘いものを摂っているにもかかわらず、脳が満足感を感じにくい状態に陥ります。
その結果、「もう少し飲みたい」「まだ食べたい」という欲求に繋がりやすく、カロリーの過剰摂取や肥満の引き金となってしまう危険性があるのです。
3. 痛風の原因「尿酸」を生成する
あまり知られていませんが、果糖が肝臓で代謝される過程では「尿酸」が生成されます。この尿酸の血中濃度が高くなると、激しい痛みを伴うことで知られる「痛風」の発症リスクも高まることが分かっています。
本当に選びたい、自然で、正直な甘みとは
この事実を知ってから、身の回りを見渡すと、いかに多くの食品に異性化糖が使われているかに改めて気づかされます。
私が伝えたいのは、これらの甘味料を完全に排除しましょう、ということではありません。現代の食生活において、それは非現実的でしょう。
問題はその特性を知らないまま、日常的に、そして大量に摂取し続けてしまうことです。特に、体を作る大切な時期にあるお子様にとっては、なおさらです。
糀シロップ コージローの甘みは、砂糖や異性化糖を一切加えず、米と米糀のみを原材料としています。
甘みの主成分は、体と脳がすぐにエネルギーとして使える「ぶどう糖」です。
もちろん、ぶどう糖にも血糖値を上げるという特性があります。どんな食べ物にも、メリットとデメリット、そして適量が存在します。
しかし一度に飲む量をコントロールできている限り、最も身体に負担が少ない選択肢と言えます。

大切なのは「知って、選ぶ」こと。

飲み物を買うとき、食品を手に取るとき。ほんの少しだけ、裏の原材料表示に目を向けてみる。そして、そこに書かれているものが何なのかを理解した上で、「これは特別な時に」「こちらは日常的に」と、ご自身やご家族の体と相談しながら選ぶ意識を持つこと。
その小さな一歩が、ご家族の未来の健康を守ることに繋がるのではないでしょうか。